下位互換性のない変更点
既存の PHP 5 のコードのほとんどは変更なしで動作するはずですが、 以下の下位互換性のない変更点については注意しましょう。
- getrusage() に互換性のない引数を渡した場合に、 PHP 5.2.1 以降では NULL を返すようになりました。
- ZipArchive::setCommentName() は、PHP 5.2.1 以降は成功した場合に TRUE を返すようになりました。
- ZipArchive::setCommentIndex() は、PHP 5.2.1 以降は成功した場合に TRUE を返すようになりました。
- SplFileObject::getFilename() は、PHP 5.2.1 以降ではファイルへの相対パスではなくファイル名のみを返すようになりました。
- Win32 における環境変数 PHPRC の優先順位が変わりました。 環境変数 PHPRC は、Windows レジストリに保存されているパスより優先されるようになりました。
- CLI SAPI は、カレントディレクトリにある php.ini や php-cli.ini を見に行かないようになりました。 明示されていませんでしたが、PHP 5.1.x では CLI バイナリが現在の作業ディレクトリにある PHP 設定ファイルを参照するようになっていました。 これは、予期せぬ設定ファイルを読み込んでしまうという問題を起こす可能性がありました。 この機能は PHP 5.2.0 で削除されました。PHP は、カレントディレクトリの php.ini や php-cli.ini を参照しません。 マニュアルの コマンドライン の部分も参照ください。
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ゼロで割った余りを求めようとすると警告が発生するようになりました。
以前のバージョンの PHP では、integer % 0 は何も警告を発せず、
予期せぬ結果である FALSE を返していました。
PHP 5.2.0 以降では、このような操作をしようとすると E_WARNING
が発生するようになりました。これは、ゼロで除算を行った際の挙動と同じです。
<?php
print 10 % 0;
/* Warning: Division by zero in filename on line n */
?> -
__toString() が、適切な場面で常にコールされるようになりました。
マジックメソッド __toString()
は、文字列コンテキストでコールされるようになりました。
つまり、オブジェクトを文字列として使用する際には常にコールされるということです。
オブジェクトを文字列として扱った場合に自動的にオブジェクト ID
が返されるという機能は、PHP 5.2.0 で廃止されました。
オブジェクト ID は常に一意となるわけではないので、この機能には問題があったわけです。
この変更により、オブジェクト ID
が返されることを前提としたアプリケーションは動作がおかしくなってしまいます。
オブジェクトの値を文字列として使用すると、(捕捉可能な) 致命的なエラーとなります。
<?php
class foo {}
$foo = new foo;
print $foo;
/* Catchable fatal error: Object of class foo could
not be converted to string in filename on line n */
?><?php
class foo {
public function __toString() {
throw new Exception;
}
}
try {
print new foo;
/* Fatal error: Method foo::__toString() must
not throw an exception in filename on line n */
} catch(Exception $e) {}
?> -
abstract static なクラス関数が削除されました。
ちょっとした手違いで、PHP 5.0.x および 5.1.x では abstract static
な関数をクラス内で定義できてしまっていました。PHP 5.2.x では、
これはインターフェイス内でのみ定義できるようになりました。
<?php
abstract class foo {
abstract static function bar();
/* Strict Standards: Static function foo::bar()
should not be abstract in filename on line n */
}
?> - Oracle 拡張モジュール を Windows で使用するには、最低でも Oracle のバージョン 10 が必要となりました。
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RFC2397 (data: ストリーム) に対応しました。
'data' URL スキームに対応したことにより、
Windows 環境での挙動が変わる可能性があります。
NTFS ファイルシステムを使用しており、
アプリケーションでメタストリームを使用していた場合、
もし 'data:' という名前のファイルをパス情報なしでアクセスしようとすると正しく動作しません。
これを避けるには、アクセス時に 'file:' プロトコルを使用します。
» RFC 2397 も参照ください。
<?php
/* allow_url_include が OFF (デフォルト) の場合 */
include "data:;base64,PD9waHAgcGhwaW5mbygpOz8+";
/* Warning: include(): URL file-access is disabled
in the server configuration in filename on line n */
?> - glob() パターンの退化 バージョン 5.2.4 でのセキュリティ修正の副作用で、 "/foo/*/bar/*" 形式のパターンがうまく動作しなくなってしまっていました。 バージョン 5.2.5 以降では、glob() が openbase_dir 制約に違反した場合に警告を発生させず false を返すようになります。