Expect 関数
導入
この拡張モジュールは、PTY を経由したプロセス同士の対話機能を提供します。 ファイルシステム関数 で expect:// ラッパ を利用すれば、シンプルでより直感的なインターフェースが利用できるでしょう。
要件
このモジュールは » expect ライブラリの 関数を使用します。libexpect バージョン >= 5.43.0 が必要です。
インストール手順
この » PECL 拡張 モジュールは PHP にバンドルされていません。 この PECL 拡張モジュールをインストールする方法は、 マニュアルの PECL 拡張モジュールのインストール という章にあります。 新規リリース・ダウンロード・ソースファイル・管理者情報・CHANGELOG といった関連する情報については、次の場所にあります。 » https://pecl.php.net/package/expect.
PHP 4 の場合、この PECL 拡張モジュール のソースは、PHP のソースの ext/ ディレクトリ、または 上の PECL リンクで入手可能です。 これらの関数を使用するには、--with-expect[=DIR] オプションを使用して expect サポートつきで PHP をコンパイルする必要があります。
Windows ユーザは、これらの関数を使用するためには php.ini の中で php_expect.dll を有効にします。 PHP 4 の場合、この DLL は PHP の Windows ダウンロードバイナリの extensions/ ディレクトリ にあります。 この PECL 拡張モジュール用の DLL は、» PHP のダウンロード ページあるいは » https://pecl4win.php.net/ からダウンロードできます。
実行時設定
php.ini の設定により動作が変化します。
expect 拡張モジュールを設定するために、 設定ファイル php.ini に 設定項目が用意されています。
名前 | デフォルト | 変更可能 | 変更履歴 |
---|---|---|---|
expect.timeout | "10" | PHP_INI_ALL | |
expect.loguser | "1" | PHP_INI_ALL | |
expect.logfile | "" | PHP_INI_ALL |
以下に設定ディレクティブに関する 簡単な説明を示します。
- expect.timeout integer
-
データを待ち受ける際のタイムアウト時間です。 expect_expectl() 関数で使用されます。
"-1" を指定すると、タイムアウトを発生させないようにします。
注意: "0" を指定すると、expect_expectl() 関数は 結果を直ちに返します。
- expect.loguser boolean
-
expect が、子プロセスの出力を標準出力に送るかどうかを指定します。 典型的な対話型プログラムは入力した内容を表示するので、これを使用すれば 対話の両方の側を表示することができます。
- expect.logfile string
-
子プロセスの出力内容が書き込まれるファイルの名前。もしファイルが 存在しない場合は新しく作成されます。
注意: この設置が空欄でなかった場合、 expect.loguser の設定内容に かかわらず出力が書き込まれます。
リソース型
expect_popen() は、オープンした PTY ストリームを返します。これを expect_expectl() で使用します。
定義済み定数
以下の定数が定義されています。 この関数の拡張モジュールが PHP 組み込みでコンパイルされているか、 実行時に動的にロードされている場合のみ使用可能です。
- EXP_GLOB (integer)
- パターンが、glob 形式の文字列パターンであることを示します。
- EXP_EXACT (integer)
- パターンが、単なる文字列であることを示します。
- EXP_REGEXP (integer)
- パターンが、正規表現形式の文字列パターンであることを示します。
- EXP_EOF (integer)
- EOF に到達した際に expect_expectl() が返す値です。
- EXP_TIMEOUT (integer)
- expect.timeout で指定した秒数を こえた際に expect_expectl() が返す値です。
- EXP_FULLBUFFER (integer)
- 一致するパターンがなかった際に expect_expectl() が返す値です。
例
この例ではリモートホストに SSH 経由で接続し、接続先の稼働時間を表示します。
Example#1 Expect の使用例
<?php
ini_set ("expect.loguser", "Off");
$stream = fopen ("expect://ssh root@remotehost uptime", "r");
$cases = array (
array (0 => "password:", 1 => PASSWORD)
);
switch (expect_expectl ($stream, $cases)) {
case PASSWORD:
fwrite ($stream, "password\n");
break;
default:
die ("リモートホストへの接続時にエラーが発生しました!\n");
}
while ($line = fgets ($stream)) {
print $line;
}
fclose ($stream);
?>
次の例は、リモートホストに接続して インストールされている OS が 32 ビットか 64 ビットかを確認し、 それぞれのパッケージのアップデートを実行します。
Example#2 もうひとつの Expect の使用例
<?php
ini_set ("expect.timeout", -1);
ini_set ("expect.loguser", "Off");
$stream = expect_popen ("ssh root@remotehost");
while (true) {
switch (expect_expectl ($stream, array (
array ("password:", PASSWORD), // SSH がパスワードを問い合わせます
array ("yes/no)?", YESNO), // SSH がホストエントリを保存するかどうかを問い合わせます
array ("~$ ", SHELL, EXP_EXACT), // シェルにたどり着きました!
))) {
case PASSWORD:
fwrite ($stream, "secret\n");
break;
case YESNO:
fwrite ($stream, "yes\n");
break;
case SHELL:
fwrite ($stream, "uname -a\n");
while (true) {
switch (expect_expectl ($stream, array (
array ("~$ ", SHELL, EXP_EXACT), // シェルにたどり着きました!
array ("^Linux.*$", UNAME, EXP_REGEXP), // uname -a の出力
), $match)) {
case UNAME:
$uname .= $match[0];
break;
case SHELL:
// アップデートの実行
if (strstr ($uname, "x86_64")) {
fwrite ($stream, "rpm -Uhv https://mirrorsite/somepath/some_64bit.rpm\n");
} else {
fwrite ($stream, "rpm -Uhv https://mirrorsite/somepath/some_32bit.rpm\n");
}
fwrite ($stream, "exit\n");
break 2;
case EXP_TIMEOUT:
case EXP_EOF:
break 2;
default:
die ("エラーが発生しました!\n");
}
}
break 2;
case EXP_TIMEOUT:
case EXP_EOF:
break 2;
default:
die ("エラーが発生しました!\n");
}
}
fclose ($stream);
?>
目次
- expect_expectl — プロセスの出力がパターンに一致する・指定した時間が経過する・ あるいは EOF に達するのいずれかにあてはまるまで待ち続ける
- expect_popen — Bourne シェル経由でコマンドを実行し、プロセスへの PTY ストリームをオープンする